理念「教育格差をなくす」

1 教育格差とは

 教育格差とは,「生まれ育った環境によって受けられる教育に格差が生まれること」です。そして,教育の格差は子どものときだけでなく,大人になってからも様々な問題を生み出します。

2 教育格差の弊害

 例えば,教育格差が大きいと,①本人の能力と関係のない要因で進路が決められてしまいます。もし,Aさんが,生活に困窮している家庭に生まれた場合,学校の勉強で良い成績を出し続けたとしても,大学に通う費用(授業料・入学金など様々な費用)を支払えなければ,大学に通うことはできません。成績が優秀であれば奨学金制度を利用すればよいとの判断をする方もいますが,奨学金で借りることができるお金は,ほぼ学費に限られます。つまり生活費に稼ぐ必要がある人は奨学金制度でお金を借りたとしても大学に通うことはできません。また,奨学金制度でお金を借りて大学に通うことで,大学卒業後にも重い返済に苦しむことになります。

 また,教育格差が大きいと,②本人の能力を向上させるためのチャンスが与えられません。もし,Bさんが,生活に困窮している家庭に生まれた場合,小さい頃から習い事や塾などをさせてもらえず,幼児教育を受けることができません。Bさんは,もうすぐ小学2年生ですが,小学1年生の足し算・引き算でつまずいており,小学2年生の算数では学校の授業についていくことが不安です。一方で,同級生のCさんは,4歳から『KUMON(くもん)』に通っており,『KUMON(くもん)』での同級生の中での成績進度では上位約10%のところにいました。そのCさんの毎日の算数の宿題は,小学4年生の算数です。つまり,Bさんは7歳で「7歳の算数」を解いてますが,Cさんは7歳で「10歳の算数」を解いています。これから,BさんとCさんの能力は差が開く一方です。特に『KUMON(くもん)』では小学4年生までに中学3年生までの内容を終わらせる子が多いようです。

3 教育格差の原因

 実際にどのような要因が原因となり,教育格差が起きるのでしょうか。

社会制度(貧困問題)

 OECD先進国で比較した2011年の国内総生産(GDP)に占める公財政教育支出(初等から高等教育の教育機関に対する支出のうち国や行政が負担するもの)を見ると,すべての先進国の中で日本が最下位でした。

 例えば,北欧にあるスウェーデンでは小学校から大学卒業までの学費負担は,ほとんどありません。これは教育費は税金で賄うという福祉国家的な教育観が影響しています。スウェーデンでは「子どもの教育は社会全体で育てる」という考えが強く根付いていると言えるでしょう。

 一方で,先の調査結果により,日本では子どもの教育費を家庭が自己負担でやりくりするという考え方が強く根付いていることがわかります。したがって,日本では家庭の経済状況が子供の教育に大きく影響することになります。(出典:OECD(経済協力開発機構)『図表でみる教育(2014年版)』)

 具体的に言うと,「貧困家庭とそうでない家庭では,全体的な進学率や中学校・高校卒業後の就職と中退率などに顕著な差が生まれる」ことが分かっています。

 例えば,2007年9月に東京大学大学院教育学研究科が行った調査によれば,保護者の年収が1000万円超である子弟の大学進学率は62%であるのに対し,年収400万円以下の大学進学率は31%と,親の年収が低いと進学率が半分にまで低下していることが判明しています。

 また,リクルートが2011年に一般入試で大学に入学した学生に対し行った調査では,高校時代に塾や予備校に通わなかった者が65%を占めており,その理由として「家庭の経済的事情」が49.4%,「近くに良い予備校が無い」が18.3%に上っています。

 このように,親のお金の状況によって,子の教育を受ける機会が全く異なります。

地域格差

 2007年9月に東京大学大学院教育学研究科が行った調査によれば,同じ中間所得層(保護者の年収が400 – 800万円)の場合でも,都市在住の子弟の大学進学率は48%であるのに対し,地方在住の子弟の進学率は41%と,居住地が地方の場合は不利であることも判明しています。

 それでは,なぜ,「地方は不利」という地域格差が生じるのでしょうか。

 地域による格差には,「みえる格差」と「みえない格差」に分類されると言われています。

 「みえる格差」とは,学校施設の老朽化や学校教育関連設備の充実度,一学校当たりの児童生徒数,社会教育施設の設置もしくは整備状況,社会教育関連職員数,学校や社会教育施設へのアクセス状況などに該当します。例えば,山奥にある田舎の学校に通学している人と,首都圏の学校に通学している人とでは塾や習い事の選択肢の幅も大きく変わります。

 一方,「みえない格差」とは,統計上のデータに表れない,その土地に暮らす人しかわからない要因による格差です。具体的には学校内外の子どもの安全を守るための地域住民の取組状況や地域の子育て支援の活動状況(子育てや子どもの体験を育てるNPO活動など),外国人児童・生徒や貧困家庭への支援活動状況など,セーフティ・ネットの存在はそこに住んでいる人でないと見えず,統計上のデータにも表れません。しかもそれらは一朝一夕で変えられるものではなく,そこで暮らす人々が長い時間をかけてけて培ってきた人間関係を起因とするものが多くあります。

なぜ「教育格差をなくしたいのか」

1 私自身の生い立ち

 私は,高校生まで,自分のことを貧しいと思って生活をしていませんでした。ましてや,ほとんど無教育であったことには気付いていませんでした。

 小学校のときの成績は,良くもなく悪くもなく,いたって平凡な子でした。いえ,忘れ物をして廊下によく立たされていたので,もしかしたら平凡な子よりも悪かったのかもしれません。あと,毎日遊んでいました。遊びしかしていませんでした。昼は友達と外でサッカーや野球をし,家ではゲームばかりをしていました。両親は,私に勉強をするように言っていましたが,いつも勉強から逃げて遊んでいました。

 中学生になったら毎日部活動(運動部)に明け暮れていました。当時,私は平日5時間・土日祝は10時間以上を部活に費やし,家に帰っても自主練習を1~2時間ほど行っていました。したがって,中学校の授業中は,毎日疲れて寝ているだけでした。

 私が,勉強を本格的に始めたのは中学3年生の夏以降です。高校受験のことを考え始めました。当時,私は,家庭での勉強を全くしていないわりには,学校での成績は平均よりも少しだけ点数がとれていました。遅ればせながら,塾にも入り,勉強を頑張ってみました。そうしたら,何を間違えたのか,偏差値60超の私立高校に合格することができました。

 私は,高校に入ったら,部活をする気がなくなりました。それは,①部活をしてもそれで職業として生活できるレベルではなかったことと,②勉強をして良い大学に合格し,良い会社に入り,お金を多く稼ぎたいと思ったからです。そこで,私は,近所の旧帝国大学の合格を目指すことにしました。

2 東大オープンの成績優秀者の実態を知り絶望

 私の家は裕福ではなかったので,大学受験は独学で勉強をしなければなりませんでした。もっとも,裕福ではなくとも,参考書代は親から出してもらって,数多くの参考書を読み・数多くの問題集を解きました。成績もある程度までは上昇しました。しかし,なかなか旧帝国大学合格レベルまで成績を上昇させることはできないでいました。

 そこで,私は,私自身の勉強方法がよくないのだと思い,県の中央図書館に置いてある勉強本を全て読み漁りました。私は,勉強本で様々な勉強方法を身に付けました。合格体験記も沢山読み,大学受験に関する情報を自分で調べて,分析をしていました。

 あるとき,私は,河合塾の旧帝国大学のオープン模試(オープン模試とは「本番形式の大学別の模試」のことです。)の成績優秀者を調べました。いったい,どのような人が成績優秀者なのかが気になったからです。その当時は,個人情報保護法の制定前で,旧帝国大学のオープン模試の成績優秀者の氏名・学校名・学年が全て掲載されていました。私は,東大を受験するつもりはありませんでしたが,東大のオープン模試の成績優秀者の情報を見ることにしました。愕然としました。

 東大オープン模試の成績優秀者(上位数%)の中に中学2年生や中学3年生が何人もいたのです。もちろん,高校1年生や高校2年生もかなりいました。そして,数えてみると,東大オープンの成績優秀者は,「高校3年生の人数」よりも「中学1年生~高校2年までの人数」の方が多いということがわかりました。

 このとき,私は,ようやく気付きました。

 私が,小学生のときに全力で遊んでいたとき,中学生のときに毎日部活をして暮らしていたとき,成績優秀者になる人は勉強をしていたのだと。

 私は当時高校1年生でしたが,勉強歴は約1年です。かたや,成績優秀者の高校1年生は同じ高校1年生でも勉強歴は約10年です。この9年間の差は,あと大学受験まで2年間では簡単には埋められない。埋められるはずがない。2年後でも,こちらの勉強歴は3年で成績優秀者は12年である。あのときの絶望は20年近く経った今でも鮮明に覚えているほどです。

 その後,私は,絶望を感じながらも,紆余曲折(私が高校2年生のときに父のガンの発覚があり,さらに家計が大ピンチになるなど)を経て,勉強を続けて,法律家になりました。私は,普段は,「相続」や「借金」についての法律専門家として生きています。

3 法律家として富裕層・貧困層と接して

(1)貧困層と接して

努力をすれば結果が出せると思っていた

努力をするための環境が必要である

お金がなければ何も始まらない

計算ができないから超高金利の利息を支払う

(2)富裕層に接して

働かなくても生きている人は結構多い

親が働かなくても良いから家庭教育が十分にできる

努力できる環境は圧倒的に富裕層

4 KUMON(くもん)でさらなる衝撃

5 社会階層を乗り越える

 「学問のすゝめ」

どのように「教育格差をなくすのか」

  • 可能な限り教育費を少なくする
  • 初等教育に力を入れる
  • 自分で効率的に勉強できる方法も教える
  • 上記の手段としてインターネットで問題集を公開する